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脚本術・理論 2025/4/29
Written by 鳥羽才一

初心者向け|起承転結と三幕構成の違いとは? 日本型シナリオとハリウッド型脚本を徹底比較!

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「起承転結」と「三幕構成」はどちらも物語作りでよく聞く言葉。なのに具体的にどう違うのか説明できる人は多くありません。日本で昔から使われてきた「起承転結」や「序破急」、ハリウッド映画を支えてきた「三幕構成」。それぞれの成り立ちや特徴、向いているジャンルや使い方の違いを、初心者にもわかりやすく解説します。

Contents

そもそも起承転結とは何か?

起承転結の意味と成り立ち

「起承転結(きしょうてんけつ)」は、日本に古くから伝わる物語構造の一つです。もともとは中国の詩の形式(律詩)に由来しており、それが日本の物語や文章作法にも取り入れられました。

構成は以下の4つのパートに分かれています。

  • 起:物語の始まり。状況やキャラクターを紹介する
  • 承:起で紹介した世界を発展させ、読者の興味を引きつける
  • 転:物語の方向性を大きく変える出来事(転機)が起こる
  • 結:物語を収束させ、きれいにまとめる

文章だけでなく、プレゼンやスピーチなど、さまざまな場面で応用されてきた、日本人にとって馴染み深い構成です。

日本の伝統的な物語構造

日本の古典文学や説話には、起承転結に沿った流れが多く見られます。たとえば『竹取物語』では、

  • 起:かぐや姫の発見
  • 承:求婚者たちとの交流
  • 転:月からのお迎え
  • 結:かぐや姫の帰還

と、起承転結のリズムに則って物語が展開されます。この構成の特徴は、急激なクライマックスではなく、流れるような展開を重視している点にあります。

序破急との違いは?

「起承転結」と並んで語られるのが「序破急(じょはきゅう)」です。こちらは日本の能や舞の構成法に由来しています。

  • 序:ゆったりとした導入。世界観の提示
  • 破:リズムを速め、動きを大きくする
  • 急:一気に最高潮へ持っていき、素早く締める

序破急は起承転結よりもスピード感を重視しており、特にリズム変化による観客の感情操作を得意とします。まとめると、

  • 起承転結=なめらかな展開で物語を運ぶ
  • 序破急=緩急を強調し、盛り上げる

という違いがあるといえるでしょう。

三幕構成とは? ハリウッド型脚本の基本

三幕構成の概要

三幕構成(Three Act Structure)は、ハリウッド映画の脚本で最も一般的に使われている物語構成法です。アリストテレスの『詩学』にまで遡る考え方をベースに、シド・フィールドやロバート・マッキーといった理論家たちによって体系化されました。構成はシンプルに三つのパートに分かれます。

  • 第一幕(序章):世界観や主人公を紹介し、物語を動かすきっかけ(インシデント)が起こる
  • 第二幕(展開):主人公が目標に向かって行動し、障害と対峙しながら成長していく
  • 第三幕(結末):クライマックスを迎え、物語に決着がつく

第一幕は全体の約25%、第二幕が約50%、第三幕が約25%という比率が基本とされます。

三幕構成の大きな特徴は主人公の変化や成長に重きを置いている点にあります。

ハリウッド映画の三幕例

わかりやすい例として『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を見てみましょう。

  • 第一幕(序章):1985年、普通の高校生マーティがドクのタイムマシン実験に巻き込まれる
  • 第二幕(展開):1955年にタイムスリップし、両親の出会いを修正しなければ未来が消えるという問題に直面する
  • 第三幕(結末):無事に両親を結びつけ、元の時代に帰還する

このように主人公が問題に直面し、それを乗り越える過程を描くのが三幕構成の核です。第一幕で「なぜこの物語を語るのか?」を提示し、第二幕で試練を重ね、第三幕で変化した主人公が問題を解決する──この流れが、観客に自然な満足感を与えます。

初心者はどう使い分ければいい?

短編なら起承転結、長編なら三幕構成

基本的な目安は作品の尺(長さ) での使い分け。

  • 5〜10分程度の短編映像作品や小説 → 起承転結が向いている
  • 90〜120分程度の映画やドラマ、長編小説 → 三幕構成が向いている

短い物語では、コンパクトに「起→承→転→結」と運ぶほうが読者や観客にストレスを与えずに済みます。逆に長い作品では三幕構成でどんどん問題が深まる展開を作らないと、途中で退屈になってしまうのです。

どちらもハイブリッドで使うのが現代流

実は起承転結と三幕構成は絶対にどちらか一方だけを使わなければいけないわけではありません。たとえば、

  • 全体は三幕構成で動かしつつ、各幕の中で起承転結を意識する
  • 三幕構成の第一幕を「起承」、第二幕を「転」、第三幕を「結」と考える

というように、ハイブリッドに使うこともできます。特に現代的なシナリオでは柔軟に構成をミックスして使いこなすのが主流です。

このシーンはどんな流れにしたいか、このキャラクターの変化をどう見せたいか──そんなふうに考えながら起承転結と三幕構成の強みを場面ごとに使い分けられると、物語の密度がぐっと高まります。

型を知れば自由に書ける!

「起承転結」と「三幕構成」は、それぞれ成り立ちも特徴も異なります。しかし、どちらも物語を自然に流し、読者や観客に伝えるために生まれた構成法です。

  • 起承転結は、流れるような展開で自然に物語を運ぶ。
  • 三幕構成は、主人公の成長や変化を通して物語をドライブさせる。

どちらが優れている、劣っているという話ではありません。大切なのはそれぞれの型を理解したうえで、自分の物語に合った方法を選ぶことです。

最初は型に沿って丁寧に設計し、慣れてきたら柔軟にミックスしていく──その積み重ねが、あなた自身の「オリジナルな物語作り」に繋がっていくはず。型を知ることは、自由への第一歩! 物語をもっと自由に、もっと力強く届けるために、ぜひ今日から意識してみてください。

ちなみに、筆者イチオシ『SAVE THE CAT』は三幕構成・起承転結をさらに分解し、発展させた、すべてに通ずる解説書。シナリオ作りだけではなく、日常的な作品鑑賞の目線チェンジへのフックともなる一冊なので、気が向けば──なんて言わず、絶対にチェックしてください。損はさせません!

save the cat