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脚本術・理論 2025/5/1
Written by 鳥羽才一

初心者向け|シナリオ・脚本の書き方入門&5つのコツ【物語を形にする第一歩】

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脚本やシナリオを書いてみたくても、右も左も分からない初心者が“いきなり書き始める”のはハードルが少し高め。基本の構成ルールから、ストーリー作りに役立つ5つの実践的なコツまで、やさしく解説します。

Contents

シナリオ(脚本)ってそもそも何を書くもの?

セリフだけじゃない! 脚本の役割とは

「脚本」と聞くと、キャラクターのセリフだけが書かれているものを想像する人もいるかもしれません。しかし実際の脚本には、セリフだけでなく、登場人物の動きや感情、場面の状況、時間帯など映像としての設計図が細かく記されています。

たとえば映画やドラマ、舞台において、脚本は以下のような情報を含みます。

  • どこで(場所)
  • いつ(時間帯)
  • 誰が(キャラクター)
  • 何をするか(行動)
  • 何を話すか(セリフ)

つまり脚本とは映像を言葉に置き換えたものとも言えるのです。

物語の「設計図」としてのシナリオ

脚本は、ストーリーを“読むための文章”ではありません。読むのは、演じる人、撮る人、編集する人など、映像制作のスタッフたちです。そのためこの脚本を元に映像化したらどうなるかが一目でわかることが重要になります。

  • 感情の動きが視覚的に伝わるか?
  • 台詞と動きが矛盾していないか?
  • 無理のないカット割りで撮影できるか?

これらを考慮したうえで書かれたシナリオは現場にとっての道しるべとなります。初心者のうちは「上手く書こう」とするよりも、まずは読めば映像が思い浮かぶように書くことを意識してみると、グッと実践的になります。

漫画やラノベに応用できる?

漫画ではラフやネームがあるのでそこまで重要な工程ではありませんが、小説・ライトノベルは先にこの脚本作業をしておくと文章に集中できるので、完璧とは言わずとも8割程度シナリオ形式で作っておくと、後の作業が格段に楽になります。

脚本の基本構成とフォーマットを知ろう

基本の三幕構成とその意味

脚本は「物語」なので、当然ながらストーリー全体の構成が重要になります。中でももっとも一般的なのが、ハリウッド式でもおなじみの「三幕構成」です。

  • 第一幕:導入(主人公と状況の紹介)
  • 第二幕:対立・葛藤(問題が深まり、試練が訪れる)
  • 第三幕:解決(クライマックスと結末)

この構成を知っておくと、どこで何を書くべきかが自然と見えてくるようになります。

「物語が途中で止まる」「終わらせ方がわからない」と悩むことが多い場合は、まずはこの構成を意識してみてください。

ページ数とシーン数の目安

映像脚本は「1ページ=およそ1分の映像」が基本形。90分の映画なら脚本も約90ページになるイメージです。また、シーンの数に決まりはありませんが、テンポの良い脚本は1シーンで1目的以上の役割があるものです。

  • 会話だけのシーン
  • アクションが中心のシーン
  • 情報を与えるシーン

など、各シーンの役割を明確にすると、読みやすく映像化しやすい脚本になります。もし要素を何個も入れられれば「シーンの圧縮=テンポが良い」作品になるかもしれません。

ステイサムの『アドレナリン』は、アレで87分らしい

テンプレートの有無とフォーマット例

脚本には、ある程度「お作法」があります。特に商業用・映画祭応募用では、フォーマットが統一されていると読みやすく、評価もされやすい傾向にあります。

日本では縦書きスタイルが一般的ですが、海外(特に英語圏)では以下のような形式が多いです。

  • 場面番号(例:1. INT. リビング – 昼)
  • ト書き(登場人物の動きや状況を簡潔に)
  • セリフ(キャラ名を中央揃えで、その下にセリフ)

初心者は、まずはテンプレートに沿って1本書いてみるのが一番の近道。フリーの脚本テンプレートや、Google Docsのフォーマットなども多数あるので、気負わず気軽に始めてみましょう。

初心者が最初につまずくポイントとは?

どこから書いていいかわからない問題

「脚本を書きたい!」と思っても、最初の1行目で止まってしまうはず。特に初心者は**冒頭から順番に書こうとして手が止まりがち。でも実際には順番通り書く必要はありません。

  • 頭に浮かんだ印象的なシーンから書いてみる ←オススメ!
  • 最後のクライマックスだけ先に決めてみる
  • 設定メモやセリフ断片だけでもOK(いつでも目に入る場所に)

まずは「書きやすい部分から書く」ことを自分に許すと、思考がスムーズに流れ始めます。私が一番オススメなのは、save the catでいう“ミッドポイント”を一点打ち込むこと。コレのおかげで書けるようになったと言っても過言ではありません。

アイデアはあるけど展開できない問題

面白い設定やキャラクターは思いつくけど「じゃあそのあと何が起こるの?」で詰まってしまう──これは初心者あるあるの筆頭です。この場合は、以下のような「小さな問い」を立ててみましょう。

  • このキャラは何を欲しがっている?
  • それを邪魔するものは何?
  • 何がきっかけで状況が変わる?

大きなストーリーよりも次の一歩だけに集中して考えると、自然と道が見えてくるものです。

キャラクターが動かない問題

設定したキャラクターが、頭の中では魅力的なのに、いざ脚本にすると全然動いてくれない──そんなときはキャラクターの目的や信念が曖昧なままスタートしている可能性があります。キャラが動くためには、

  • 何を達成したいのか(目標)
  • なぜそれにこだわるのか(動機)
  • それを邪魔するのは何か(障害)

この3点をクリアにしましょう。キャラクターにとって「絶対に譲れない何か」があると、セリフも行動も自然に生まれてきます。ジョジョ5部のブチャラティから学びましょう。


吐き気をもよおす『邪悪』とはッ!
なにも知らぬ無知なる者を利用する事だ……!!
自分の利益だけのために利用する事だ…
父親がなにも知らぬ『娘』を!!
てめーだけの都合でッ!
ゆるさねえッ!
あんたは今 再び オレの心を『裏切った』ッ!

脚本を書くときの5つのコツ

① 最初から完璧を目指さない

脚本を書き始めたばかりの頃は「ちゃんとしたものを書くべき」と考えすぎて手が止まってしまうことがよくあります。でも、最初の段階では完成させること自体が大事な成果。つまらない“べき”は切り捨てて、最初の1本目は下書きだと割り切る勢いで最後まで書き切ってみましょう。あとから直せばいくらでも良くなります。

② 読み手(演じ手)を意識する

脚本は、自分のためだけではなく、読む人・演じる人・撮る人のためのものです。もちろんラノベでもそれは同じ。このセリフは口に出して自然か、この動きは再現できるか、といった視点を意識しましょう。

③ セリフよりも行動で語らせる

物語の中で人物の心情や関係性を伝える手段として、セリフに頼りすぎると不自然になりがちです。むしろ、キャラクターの行動や選択によって語らせたほうが、リアリティが生まれます。

たとえば「怒ってるんだよ!」と叫ばせるより、無言でドアを乱暴に閉めるほうが強く伝わることも。行動はセリフ以上に雄弁です。セリフで語る場合は、その人物の信念なんかを表明する時だけ、みたいに縛るのも効果的。今度はジョルノに学びましょう。


「覚悟」とは………………犠牲の心ではないッ!
「覚悟」とは!!暗闇の荒野に!!進むべき道を切り開くことだッ!

④ 物語を1枚にまとめてから着手する

いきなり脚本を書き始める前に、物語の概要を1枚のメモにまとめるのもオススメです。

  • 主人公は誰で、何を目指すのか
  • 何が障害となり、どう乗り越えるのか
  • 結末はどうなるのか

この「プロットメモ」があるだけで執筆中に迷いにくくなり、軸のブレない脚本が書けるようになります。

⑤ 書いたあとに声に出して読んでみる

書き上げた脚本は声に出して読むのも必須。自分の耳で聞くことで、

  • セリフが不自然ではないか
  • リズムが単調になっていないか
  • 感情の流れが途切れていないか

といったことに気づけるようになります。演技ができなくても構いません。音読するだけで**“読み物”から“演じられる台本”へ**と変わっていきます。

「書きたい!」を形にする第一歩に

脚本やシナリオを書くことは、難しそうに見えて、実は自分の頭の中にある物語を順序立てて形にするだけの作業です。

  • 物語の構成(例:三幕構成)を知る
  • 誰にどう読まれるかを意識する
  • 完璧よりもまず最後まで書くことを目指す

こうした基本を押さえるだけで、書くことへのハードルはグッと下がります。特に初心者のうちは「上手く」書くよりも「書き切る」ことに集中するだけでOK。実際、書き上げた経験があるかないかで、次の一歩の重みはまるで変わってきます。

あなたの「書きたい!」という気持ちは、すでに脚本家としての最初の一歩──まずは1本を形にしてみましょう。そこからすべてが始まります。

save the cat