価値観は時代と共に移ろいゆく。美味しければ売れたお菓子界でも、糖質カット(ロカボ)やギルトフリー等、健康志向が目立ってきている。油や糖質はもう古いのか──否、変わらない良さも必ずある。ポテトフライに見る、男の世界。
じゃがいもの粉末と小麦粉を混ぜ、天ぷらの衣のようにして揚げた駄菓子である(パッケージより)。天ぷらといっても卵は使わないタイプのようで、原材料には含まれていない。
説明文から感づいた方もいることだろう、鮭の皮・天かす・ほぼ衣だけのカリカリのフライドポテト等が好きなら、間違いなく気に入るジャンキーさ。健康志向になど見向きもしない、連綿と受け継がれる漢らしい駄菓子といえるだろう。
1980年に製造を開始した4枚(11g)入りの駄菓子。名称は【油菓子】、製造者は【東豊製菓株式会社】だ。……お気付きだろうか。油菓子である。
東豊製菓は愛知県にある会社だが、愛知の郷土菓子の『油菓子』とは恐らく無関係。製法は似ているものの、あちらはどちらかというと素朴なので、ジャンキーなポテトフライとは対極に位置している気がする。まあ名称はわりとメーカーの自由らしいので、ちょっとした郷土愛ということにしておこう。
売れ行きは好調らしく、公式サイトにも人気No.1の文字が。少子化や健康志向で駄菓子が売れないと叫ばれる中、2013年にポテトフライ用の新ラインが増設されているほど。やはり美味いは『油』と『糖質』であり、古い価値観などではなく、永久の正義なのである。
パッケージの両性的な可愛らしさのキャラクターは【ポッチくん】という名前。ポテトフライ チキン味の頭文字が由来で、2001年に消費者からの公募で決まった、愛されている少年だ。
バックグラウンドは特にないとのことだが「おまちどう」「いらっしゃい」「できたてだよ」というパッケージの台詞から察するに、この年から家業を手伝っているのだろう。実はこれはデフォルメされた大人の姿で、伝統の味(と姿)を守る職人という可能性も捨てきれない。
どちらにしろポッチくんからは「油分カット」「からだに優しい」などとは言いそうにない、謎の包容力が感じられる。まさに働くオトコ。男の中の男といえるだろう。
ちなみに名前が決まっていなかった時の名残か、公式サイトの右上のポッチくんのaltタグには【こんがりくん】と書かれている。正式名称ではないので間違わないようにしたい。なおポッチくんはチキン味のキャラクターなのでポテトフライ『カルビ焼』『じゃが塩バター』には描かれていない。
非常に珍しい事例ではあるが、近年ポテトフライは【ポテフ】と略されるようになった。これは2014年から週刊少年サンデーで連載されていた『だがしかし(2018年完結)』のヒロイン『枝垂ほたる』さんの影響で、それ以前は全く呼ばれていなかった。
『4枚一気食い』なども彼女が発祥で「好みの男性はポッチくん」と明かしたりと、なかなかポテトフライと関係が深い。興味がある方は一度読んでみるといいだろう。お話を伺った東豊製菓の方も印象深いらしく、かなりこの点に触れていた。
一見すると薄焼き煎餅──しかし食べてみると違いは瞭然である。まず、味が濃い! デフォルトで粉が偏ってかかったポテトチップスのように濃い。酒のつまみでもさすがにここまでハッキリとした味のものは近年少ない気がする。平成で失われつつある、貴重な濃い味である。
油を含めて風味はフライドチキン感が強く、単体でファーストキッチンのフレーバーポテトを凌駕しているかもしれない。開発当初、味はケンタッキーのフライドチキンを想定して作られたとのことだが、十二分に彼の味を想い起こさせる出来だ。揚げ物の衣に混ぜても美味しいかもしれない。
表面の三本のリブは、割れにくくするために入っているんだとか。味はもちろんのこと、サクッとした食感もポテトフライの魅力の一つ──割れやすさというデメリットを消す、重要なポイントというわけだ。
品名 | ポテトフライ フライドチキン味 |
製造 | 東豊製菓株式会社 |
原材料名 | 小麦粉、パーム油、馬鈴薯(遺伝子組み換えでない)、
コーンスターチ(遺伝子組み換えでない)、食塩、粉末醤油、 |
栄養成分表示 (11gあたり) |
エネルギー62kcal、たんぱく質0.7g、脂質4.1g、 炭水化物5.5g、食塩相当量0.28g |
内容量 | 11g |
公式サイト | http://www.toho-seika.co.jp/item/item_detail.php?iid=74 |